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平野:懐かしいっていう言葉は、今は懐古的な意味ですけれど、もともと親しみやすいっていう意味もあるんですよね。そっちのほうがむしろ原義で。今回はレトロフューチャーみたいなコンセプトも出されていますけれど、そういう意味では二重の意味で懐かしいというか。なんかどこかで、本当は知らなかったんだけど知っているような気がするという意味と、親しみ深いっていう意味での懐かしいっていう意味。2つの意味がどちらも実現されているというか。そういう感じがします。
勝:ええ。親しみ、懐かしさ、なんとなく安心感というのが、なにか社会背景、時代の変化みたいなものも深澤さんが感じられて、きっとデザインのほうにもつながっていらっしゃると思うんですけれども。なにか、人が求めるものといいますか。
深澤:そうですね。自分が求めたものよりも進化している感じがしますが(笑)。インターフェースもデザインしているんですけど、中にこれだけのものが全部詰まっているというのはやっぱりかなりびっくりします。もちろん、ワンセグもそうなんですけれど、こんなものの中にこんなものが全部入ってていいのかっていう風な。自分で分かっていながらやっているんだけど、いざ手にとって動かしてみると、なんという時代だと(笑)。
勝:すごい時代だと(笑)。
深澤:マジックで出来上がったものじゃないかっていうぐらい、びっくりしますね。
勝:携帯電話というコミュニケーションツールの代表的なものが、このように丸みを帯びた形というのも、わたしはなにかすごく安心する気がします。それがこれからのキーワードになるのか、なにかこう、よりどころ的なものとして安心する気がするんですけれども。
深澤:うん。携帯電話って誰でも使うものですからね。例えば、若者でガジェットが好きな人たちに向けて作っているわけではないんですよね。これはキーも大きいし、見やすいしということで、お年を召した方にも、僕なんかもだんだん目が悪くなっていますけれど、そういう人たちにも受け入れられるっていうね。ある種のマーケティングでセグメントした人に当てようということでやっているわけではなくて、一つの基準を出していると思うんですよね。
勝:ええ。携帯電話にいろいろなものを求めていらっしゃると思いますが?
平野:そうですね。だから本当に大げさじゃなくて、僕らの世界を見ている風景って、携帯電話が出て変わったと思うんですよ。携帯があるまでは、僕たちの生活って基本的に手が届く範囲だったでしょう。だけど、携帯電話が出てきてから、今はもうそれ以上の情報端末になっていますけど、「彼方」っていうものがいつでもアクセスできるようになったでしょう。
平野:だけど、それは適当に手を伸ばしてパッと接せられるのじゃなくて「ここ」(携帯電話)なんですよ。ここがいつも彼方との接点なんですよね。
勝:そうですね。
平野:それはすごいテクノロジーが詰め込まれていて、下手をするとすごくいかめしいものになってしまう可能性ってあると思うんです。機械に弱い人が自分にはアクセスできない世界だと思ってしまう可能性もある。
そのときに、こういうデザインというものが人と機械を近づけるし、手の届く範囲の世界のもう一つ向こう側と常に接し続けていられる、窓としての情報端末を人間に近づけてくれると思うんです。だからケータイって、日本の家電とか、そういうデザインプロダクツが発展していく中で、ある意味、いい時期に出てきたというか。計算機とかほかのいろんなものがおしゃれになっていくより、やっぱりケータイはここまで来るのが早かったと思うんです。最初は電卓みたいなデザインでしたけれど、あっという間にここまで来てしまった感じなんです。
勝:そうですね。
深澤:ここまで来ると、もうこれが今日、今の瞬間から当たり前になっちゃうんですよね。だからすごくびっくりするのは、今までスゴい、スゴいと言っていたものが、普通の人が一斉にこれを普通のテクノロジーだと思うようになるっていうことで、見えないところで生活が大きく変化しちゃったっていうポイントに今、いると思うんですけど、それって不思議な感じがしますよね。
勝:大変短い時間で恐縮ですが、そろそろ終了のお時間となってしまいました。何か一言、最後に皆さまにこれは言っておきたいというメッセージがありますか。
深澤:そうですね。やっぱり、携帯電話というもの自体がコミュニケーションツールとして非常にスタンダードになってきていると思うんですよね。だから、それが今後どうなるんだろうということを、たぶんここに来ていらっしゃる人たちは常に考えていると思うんですけれども、その中で適正な解を出していくというのが僕らの仕事で、なかなか未来はそんなに読み切れないんですけれども、ただ、INFOBARという一つのスタンダードは、携帯情報機器としての一つの普遍的な提案をしている位置を取っているということはいえるんじゃないかということで、次の進化もぜひ期待していただきたいなとは思います。
勝:今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
深澤:どうもありがとうございました。
平野:ありがとうございました。